クリシュナはヴィシュヌの第八番目の化身とされる存在であり、インド神話の神々の中で最も民衆に親しまれている神格の一柱である。
その性格は数多ある叙事詩や詩歌の役割上、怪力と武勇に優れた英雄、奥深い知識を持つ宗教指導者、あらゆる女性を惹きつける魅力的な牧童、そしてヴィシュヴァ・ルーパとして全宇宙を内包する神など幅が広い。
図像では横笛を持つ姿が最も多くみられ、横笛を構えて左足で地を踏み右足を折り曲げた“ヴェーヌゴーパラ”という立像以外にも、戦いの場面や女性と戯れる絵画にも横笛を手にしたクリシュナ像が描かれている。
クリシュナの妻は数多く、「バーガヴァタ・プラーナ」のルクミニーや「ギータ・ゴーヴィンダ」のラーダーを初めとして、他に悪魔と戦って得た七人の女性や天界に攻め入ったナラカを討った時に彼の王宮にいた一万六千人のアプサラスなどが挙げられる。特に「ギータ・ゴーヴィンダ」のクリシュナとラーダーの恋物語は男性の本質と女性の本質を描くという哲学的な意味以上に、インドにおける理想の恋愛像として人気を博していて多くの細密画が存在する。
クリシュナは優れた戦士・英雄としての描写も枚挙にいとまがなく、無数の悪魔退治や神との力比べが神話伝承中で語られている。また、武器としてアグニから授かった正確に的に当たるチャクラム“ヴァジュラナーバ”と、何人も抵抗できない力を持つ棍棒“カウモーダキー”を所有する。なお、チャクラムは叙事詩中でもクリシュナの使う武器としてしばしば登場する(シシュパーラ殺害時、マハーバーラタの戦争第9日目等)。
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